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長崎家庭裁判所佐世保支部 平成10年(家)332号 審判 2000年2月23日

申立人 長崎県中央児童相談所長 X1

長崎県佐世保児童相談所長 X2

事件本人 A

未成年者 B

主文

事件本人Aの未成年者3名に対する各親権をいずれも喪失させる。

理由

第1本件各申立ての要旨

1  未成年者B関係

(1)  未成年者Bは事件本人の養女で、事件本人がその親権者である。

(2)  未成年者Bは、事件本人が逮捕されたため、平成8年3月以来児童養護施設「a」に入所しているが、事件本人は、それまで、未成年者Bに対し親権を濫用して日常的に性的、身体的虐待を加えていた。

(3)  未成年者Bは、事件本人が逮捕される度に、児童養護施設への入所措置を取られていたが、事件本人は、出所すると、未成年者Bの引き取りを強要してきた経緯があるので、今後も、放置すると、未成年者Bの引き取りを強要し、再び未成年者Bに対し性的、身体的虐待を加えるおそれが強い。

(4)  そこで、事件本人の未成年者Bに対する親権の喪失宣告を求める。

2  未成年者C関係

(1)  未成年者Cは事件本人の長男で、事件本人がその親権者である。

(2)  未成年者Cは、事件本人が未成年者Cに対する傷害事件で逮捕されたため、現在児童養護施設に入所しているが、事件本人は、それまで、未成年者Cに対し親権を濫用して日常的に身体的暴力を加えていた。

(3)  このような事件本人の所業を放置すれば、事件本人が、今後刑務所を出所した後、未成年者Cの引き取りを強要し、未成年者Cが再び危険な状態に置かれることが予想される。

(4)  そこで、事件本人の未成年者Cに対する親権の喪失宣告を求める。

3  未成年者D関係

(1)  未成年者Dは事件本人の長女で、事件本人がその親権者である。

(2)  未成年者Dは、事件本人が未成年者Cに対する傷害事件で逮捕されたため、現在児童養護施設に入所しているが、事件本人は、それまで、未成年者Dに対し親権を濫用して日常的に身体的暴力を加えていた。

(3)  このような事件本人の所業を放置すれば、事件本人が、今後刑務所を出所した後、未成年者Dの引き取りを強要し、未成年者Dが再び危険な状態に置かれることが予想される。

(4)  そこで、事件本人の未成年者Dに対する親権の喪失宣告を求める。

第2当裁判所の判断

1  未成年者B関係

本件記録中の各資料及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、上記第1の1記載の事実が認められる。

そうすると、未成年者Bの親権者である事件本人は、その親権を濫用して、未成年者Bに対し性的、身体的虐待を加え、その福祉を著しく損なっていたものといわなければならないので、未成年者Bを事件本人の親権に服させることは不相当である(なお、家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、事件本人も、未成年者Bに対する親権については、喪失することを了承する旨述べていることが認められる)。

2  未成年者C関係

本件記録中の各資料及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、上記第1の2記載の事実、及び、事件本人は、自己の気に食わないことがあった際などに日常的に未成年者Cに身体的折檻を繰り返していたが、平成10年10月25日には、自宅において、未成年者Cの態度が気に食わないとして、手挙でその顔面や頭部を数回殴打した上、洋出刄包丁でその左鼠蹊部を1回突き刺すなどの暴行を加えて、未成年者Cに全治約2週間を要する左鼠蹊部刺創、頭部打撲の傷害を負わせたことが認められる。

そうすると、未成年者Cの親権者である事件本人は、その親権を濫用して、未成年者Cに対し日常的に身体的暴力を加え、その福祉を著しく損なっていたことが明らかであるから、未成年者Cを事件本人の親権に服させることは不相当である。

3  未成年者D関係

本件記録中の各資料及び家庭裁判所調査官作成の調査報告書によれば、上記第1の3記載の事実に加えて、事件本人は、未成年者Dに対し、未成年者Dが11歳のころから事件本人が未成年者Cに対する傷害事件で逮捕されるまでの1年余りにわたって日常的に性的虐待を加えていたことが認められる。

そうすると、未成年者Dの親権者である事件本人は、その親権を濫用して、未成年者Dに対し日常的に性的虐待等を加え、その福祉を著しく損なっていたことが明らかであるから、未成年者Dを事件本人の親権に服させることは不相当である。

4  よって、本件各申立てはいずれも理由があるので、主文のとおり審判する。

(家事審判官 濱崎裕)

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